ミツバチの管理

重箱式巣箱は、労力や時間がかからない巣箱です。

ニホンミツバチは野生のミツバチで、病害虫に耐性を持っています。天敵のオオスズメバチにも対抗策を持ち、日本の寒い冬にも適応しています。

巣の成長に合わせて重箱を追加する以外に、必要な世話は多くありません。

巣の成長に合わせた重箱の追加

ニホンミツバチの巣は上から下へ伸びていくため、巣の成長に合わせて一番下に重箱を追加します。次の動画では、巣箱の追加方法を紹介しています。

この動画では巣がはみ出ていますが、これは予想以上に巣の成長が早かったためです。持ち上げ機を使っていたおかげで無事に継ぎ箱することができました。

内検

重箱式巣箱では巣枠がないため、内検は限られています。内検の方法は丸洞式巣箱と大きくは変わりません。次の2つの方法があります。

1つ目は、巣箱を底から覗いて、巣を直接見ることです。2つ目は、巣から出入りするミツバチを観察することです。

巣箱の底から巣を直接見る方法

次の動画は、巣箱に入って2週間が経ったニホンミツバチの巣の様子です。巣箱の下の板が引き出せるようになっており、下から直接巣を見ることができます。

この方法では、次の様な内容を確認します。

  • 巣の大きさ
  • ミツバチの数が十分に多いか

次の動画は健康な群れの様子で、多数のミツバチがおり、巣も成長しています。

一方、次の群れはミツバチの数が少なくなっています。

巣門から出入りするミツバチの観察

次の様な項目を確認します

  • ミツバチが花粉を運んでいるか
  • 出入りするミツバチの数
  • 雄蜂の数

内検は月に1回で十分です。重箱式巣箱ではニホンミツバチ任せ、自然任せであるので、内検して問題を発見したからといってできることも多くありません。

例えば、巣枠式巣箱では、女王蜂の産卵の状況を確認しますが、重箱式巣箱では巣板を見ることができません。

分蜂の管理

重箱式巣箱では、群れの分割を人工的に行うことは困難です。

また、王台を潰して分蜂を防ぐことも難しいので、自由に分蜂させるのが一般的です。元の群れから数百メートル以内に分蜂群れが飛んでいくことが多いため、その範囲に待ち箱を設置してニホンミツバチの入居を待ちます。

また、分蜂すると元の巣箱のすぐ近くにいったん集合するので、集合した状態の分蜂を強制的に巣箱に入れてしまいます。

分蜂して自然に戻る群れもいるが、大きな問題ではない

健康なニホンミツバチの群れであれば、春に3、4回は分蜂します。

分蜂が起こりそうな日に巣箱に目を光らせ、分蜂して出てきたところを捕獲したり、周りにたくさんの待ち箱を設置しておけば、ほとんどの分蜂を捕獲できます。

すべての分蜂群れの捕獲は難しく、飼育群れから分蜂が飛んでいき、野生に巣を作ることも多いですが、ニホンミツバチを自然のままに飼育するスタイル上、それほど大きな問題ではありません。

飼育群れの30%は死滅するが、”自然”なことである

野生の群れの場合、次のような理由から、翌年までに営巣を続けられる群れは4分の1程度であると考えられます。

  • 1つの群れが、春に3回前後分蜂する
  • 春先には、一時的に群れの数が4倍程度になる
  • 長期的に見ると群れの数は一定

一方で、人間が重箱式巣箱で飼育する場合、7割程度は生き残ることができます。

野生に近い飼育方法でありながら、7割程度も生き残ることができるのは、次の理由からです。

  • 巣箱がしっかりと丈夫なものである
  • 巣箱は、オオスズメバチを防ぐ構造となっている
  • 天敵のクマから守るため、電気柵で巣箱を保護する
  • 群れが過密になった場合は、移動させて調整される
  • 餌不足に陥った群れに、給餌する場合がある

反対に言えば、3割の群れは失われるのですが、これは十分に高い割合です。春に分蜂群れを捕獲することで、群れを増やしていくことができます。

観察用の開放巣

重箱式巣箱は観察ができないため、観察用に開放巣を作っています。

重箱式巣箱に作られた巣を、小屋の天井に取り付けて、そのまま巣を作らせています。

開放巣について詳しくは、次のリンクをご覧ください。

開放巣

重箱式巣箱では内部の様子を見ることができないため、このような開放巣を観察用に作っています。観察動画も多数ありますのでお楽しみください。

開放巣